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2011年6月29日 (水)

東電のシャンャン総会&放射線楽観論振りまく困った学者

 まさか梅雨明けではないだろうに、なんという暑さだろう。さすがに我が家のドラ猫もへたり気味。採光抜群の仕事部屋は、その分暑さもハンパじゃありません。いまのところは扇風機でどうにかしのいでいるけど、夏本番になったらどうなることやら。

 どんなに暑かろうと、今年の夏は節電抜きには語れないことは確かであって、そうなると節電便乗ビジネスなんてのも出てくるんでしょうね。とはいえ、いくらなんでも、「節電議会」はいかんでしょう。これ、東京新聞が伝えてるんだが、川崎市議会が節電を理由に議員の一般質問時間の15%(約5分)短縮を検討していたんだとか。「節電を理由に行うべきでない」という至極もっともな声が上がって実施は見送られたって言うのだが、これって震災を口実に増税しようという画策とどこか似ている。ともあれ、「節電議会」とは本末転倒もはなはだしい、なんともしょぼい発想ではあることよ。

 昨日の東電の株主総会は、見た目には大荒れとも言えるけど、なんてことはない時間をかけましたってアリバイ作りをしただけの「シャンシャン総会」ってのが実態だったんじゃないのかなあ。東京都もそうだけど、大株主たちは事前に委任状を提出して、どんな動議が出たって多数決では東電側の勝利ってのが決まってたんだからね。ま、世界中に放射能を撒き散らして迷惑かけてる企業の株主総会とはとても思えないガス抜き総会だったことは確かだ。

 原発推進ってのは国策ではあるんだが、ようするに国策民営という図式の中で企業も株主もぬくぬくとしていたたわけで、どんなゴタクを並べたところで双方ともに原発事故の責任は免れない。脱原発にシフトしようという提案に対して、反対に回った大株主ってのは何考えてるんだか。株で儲けるだけ儲けておいて、ひとたび事故が起きても責任は取りませんどころか、株価下落したのは原発推進した政府にも責任があるんだから、原発賠償法適用して公費を投入してでも東電を守ろうってのはいくらなんでも虫がよすぎるというものでしょう。ていうか、人の命と引き替えにしてまで株で儲けようという根性が気に入らない。大株主の東京都が反対にまわったということは、人の命よりも電力不足のリスクの方が大事だと表明したようなもんです。

 ところで、原子力村の御用学者の先生たちも、このところさすがに鳴りを潜めていると思っていたら、東京新聞朝刊のコラム「談論誘発」で、あの中川恵一大先生が、「どうみる?放射線」というしょうもない原稿を寄稿していた。書き出しからして、「大震災からおよそ三カ月半。いまも"放射線パニック"は収まらない」とかましてくれてます。放射線パニックだそうです。子供の健康を心配する母親の心理のどこがパニックなんでしょう。事実を捻じ曲げた楽観論を垂れ流した自分の責任を棚に上げて、よくもまあぬけぬけとおっしゃるもんです。

 さらに、「涙ながらに危険を訴える学者や安全を強調する医師、専門家の意見や立場などさまざまである」と続きます。ここは、お前もな、と軽く突っ込むところですが、続けて「原発に利権がからむという"常識"もあってか、専門家の意見に国民は疑心暗鬼に陥っている」ときます。記号で囲んだ「常識」という言葉の使い方に、なんともいやみな原稿ということがわかろうというもの。

 で、結局のところ、中川大先生が言いたいことというのは、こうなります。「今回の問題は、『白』か『黒』かの『二元論』では解決できない。絶対的な正義などないと同様に、放射線被ばくの問題でも『純白』は存在しない。そもそも『灰色』しかない放射線の問題で、『純白』を求めようとしているのがいまの日本人の姿といいえる」・・・いやはやであります。「絶対的な正義などないと同様に・・・」なんてぬかしてますが、放射線の問題は科学であって、「正義」という観念論と対比すること自体おかしなものなんだけど、それはともかく、そもそも事実認識に齟齬があるんですね、この大先生の原稿は。

 大先生は、「『純白』を求めようとしているのがいまの日本人の姿」と言うのだが、そんな認識でいるから何言っても説得力に欠けちゃうんですね。それどころか、多くの日本人は、「灰色」だから放射線は怖い、と感じているのだと思う。そもそも、年間に1ミリシーベルトという決まりは、放射性物質の影響にはグレーゾーンが大きいからこそ決められたものなんだよね。だから、「線量を下げる知恵とともに、一時的には『灰色』も認める柔軟な判断も求められているといえるだろう」なんてご意見はとても危険なものなのだ。

 中川大先生の能天気な楽観論に引き替え、中部大学の武田教授は、自身のブログで次のように記している。

(これより引用)

 仮に100ミリシーベルト以下でガンのリスクが少ないのであれば、国際的に1年1ミリシーベルトの規制等が誕生しないからです。今まで、1年5ミリ、0.5ミリといろいろな規制の変遷を経て、また医学の進歩を踏まえて1980年に1年1ミリが決まっているのです。

 それには膨大な論文があり、「具体的な論証は不足しているが、世界的なガンの発生の状況から、放射線がガンを誘発する危険性は十分に高い」ということから、決まっているのです。

(引用終わり)

・武田邦彦(中部大学)のブログ
国立ガンセンターなのにガンを増やすのに一生懸命!?
1年20ミリの被曝の被害に、何で報いるのか?

 ようするに、「灰色」だから安心なのではなくて、「灰色」だから何が起きても不思議ではないってことなんですね。学者ってものは、リスクに対して、ましてやそれが生命にかかわるような場合は、厳格なまでの自省が求められるものだ。シロートの危機意識を「パツニック」と断じてはばからない学者先生に、「いまの日本人の姿云々」などと知ったようなことを論じてほしくはないと朝から腹立ちまぎれのくろねこであった。

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