被災地を恫喝する復興担当大臣&国民を愚民扱いする原発世論対策マニュアル
石原裕次郎の映画に『太陽への脱出』(1963年、監督舛田利雄)というのがある。東南アジアで武器密輸をする死の商人に仕立て上げられた青年の悲劇を描いたもので、ラストでは銃弾を浴びて惨殺される。主人公が死んでしまうという結末、それも裕次郎がっていうのでちょいと話題になったのだが、この中で裕次郎がピアノを弾きながら中原中也の「骨」を歌うシーンがある。
ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ
ヌックと出た、骨の尖。
それは光沢もない、
ただいたづらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分空を反映する。
生きてゐた時に、
これが食堂の雑踏の中に、
坐つてゐたこともある、
みつばのおしたしを食つたこともある、
と思へばなんとも可笑しい。
ホラホラ、これが僕の骨――
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?
故郷の小川のへりに、
半ばは枯れた草に立つて
見てゐるのは、――僕?
恰度立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがつてゐる。
当時中学生だった僕にとって、「ホラホラ、これが僕の骨だ」というフレーズはなんとも衝撃的なものだった。そして、その歌ひとつで、この映画は僕の中で名作となった。 「骨」が中原中也の詩であることを知ったのはずいぶん後のことで、「サーカス」で初めて中原中也に触れ、しばらく読みふけった時のことだから高校3年にはなっていたかもしれない。
それはともかく、その『太陽への脱出』を、昨夜、何十年ぶりかでチヤンネルNECOで観た。いまとなっては、ストーリー展開にはかなり無理があるものの、「骨」を弾き語りするシーンは何回観てもまったく色褪せることなくエロチックなものだった。誰もいないバーのカウンターで、白のディナージャケットを羽織り、グラス片手に煙草をくゆらせる裕次郎。ああ、これは、『カサブランカ』だ。ボギーへのオマージュなのだ、と今回改めて気づかされたのも収穫であった。ちなみに、共演の岩崎加根子と殿山泰司も必見です。
で、ちょいと映画の余韻に浸っていると、ふんぞり返った復興担当大臣がなにやら偉そうにしているニュースが・・・。なんとまあ品のない、とその時は思ったのだが、一夜明けてみればこれがとんでもハップン、歩いて10分なことになっていた。東京新聞は、「被災知事を厳しく激励」なんて、見出しではおとなしく報じているが、その中身といったらこれは激励ではなくて恫喝以外の何ものでもない。「智恵を出さないやつは助けないぐらいの気持ちを持って」とか「こっちも突き放すところは突き放す」とか、被災地の甘えは許さんぞって脅してるわけで、挙句には「客待たしてどうする」みたいなことも口走っていた。こやつは、お客さんのつもりなのか。逆だろう。被災地にとってみれば、このくそ忙しいのに大名旅行されちゃ迷惑なだけなんだから、本来ならふんぞり大臣が腰を低くして「お忙しいところすんません」と言うのが礼儀というもの。
それにしても、この言葉使いの横柄さってのは、いい歳こいて親の顔が見たくなります。おそらく、レイシスト知事が相手だったらこんな口の利き方しないだろうし、できなかったに違いない。岩手の達曽君も、宮城の村井君も、ニコニコ相手してないで、怒鳴り返してやればよかったのにとつくづく思う。「ここからはオフレコ」」って言い放つ時の権力握った小心者の卑屈さをとんとご覧ください。
ところで、赤旗が、日本原子力文化振興財団がまとめた「世論対策マニュアル」について報じているのだが、予想していたとはいえ、そのエグさにはもう腹が立つというより、呆れます。曰く、
・繰り返せば刷り込み効果
・文科系は数字をありがたがる
・良識的コメンテーターの養成
・テレビディレクターに知恵を注入
などなど
・原発推進へ国民分断、メディア懐柔 これが世論対策マニュアル
ようするに、原発推進する輩ってのは、「今」がよければなんでもいいのであって、将来のことなんか知ったこっちゃないってことです。1983年に当時の敦賀市長が講演でぬかした言葉こそ、原発推進する人たちの本音なんでしょうね。
「原発は金のなる木。棚ぼた式のまちづくりができる」
「そのかわり百年たってカタワ(講演録ママ)が生まれてくるやら、五十年後に生んだ子どもが全部カタワ(同)になるやら、それはわからない。わからないけど今の段階ではやったほうがよい」
(東京新聞「こちら特報部」より)
おお、コワッ!!
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コメント
松本大臣の態度はほめらたものではないが、村井知事も相当胡散臭い。
宮城県の仮設住宅は地元業者を入れずに、プレハブ協会に丸投げ。復興計画も野村総研にベッタリ。漁港の集約は漁民無視。
裏はどうなってるのか?
マァー松本大臣も裏は松本組(地方ゼネコン)だったりと色々ありますが、大臣と知事、ある意味ガチンコでぶつかんないと復興なんてままならないとも思うしだい。
投稿: こなつ | 2011年7月 5日 (火) 09時19分
ふんぞり返った復興担当大臣の件、「政治がヘン過ぎるな?」と、ふと見たらあんなのが大きな顔していたりするんですね、ビックリ。「なんだか電車の運転があぶなっかしいな?」とヒョイと見ると運転席におサルが座っていた、、、そんな衝撃に通ずるものがありましょうか?イヤそんな例えはいらないですね(笑)。いやはや「うんざりに上塗り」を何重にしてくれるんでしょうか?今度ばかりはひどく怒りを感じ民主党にメールやファクス送りましたが、、、、 むなしい、、、 今迄恫喝におとなしく従ってきたであろうマスコミもなんだか、、、モー!
投稿: Yoshi | 2011年7月 4日 (月) 21時10分