アメリカでたわけをぬかす亡国の宰相&川島雄三はやっぱり天才だ!
何しに行ったんだかよくわかんないのだけど、ノダメ君がアメリカで遊んでいる。お友達のオバマ君と会談もできたしってんで、早速のところその成果をお披露目としようとしたんだろうね。日米同盟について、「より美しい花を咲かせるため、先頭に立って土づくりや水やりに努力していくことを誓う」なんてわけのわかんないたわけたことをぬかしてます。娘さんがヅカガールであるところのジャーナリストの内田君は、放射能に汚染された被災地の人たちはこの言葉をどんな思いで聞くのだろう、というようなことを文化放送『ソコトコ』でコメントしてたが、おっしゃる通りです。土づくや水やりに努力するってんなら、東北行って除染活動してみろってんだ。
ところで、ゴールデンウィークだからといって、特にどこかへ遠出しようなんて了見はないのは今年も同じで、昨日はカミさんとちょいと近場にチャリでお散歩。蕎麦屋でお昼をいただき、ドラ猫が待つ我が家へと一目散、てなグータラな午後であった。で、ゴロリと横になって、TVをつければ、日本映画専門チャンネルで、川島雄三の『しとやかな獣』が開演するところだった。川島作品は、『幕末太陽伝』と『州崎パラダイス赤信号』『喜劇とんかつ一代』の3本しか観たことがなかったので、ジックリと観賞することにしたのであった。
で、映画が始まり、ものの数分でなんとも不可思議な映像空間に引きずりこまれてしまったのであった。舞台は、高度成長経済のトバ口に立つ昭和の団地の一室。ここに住む元海岸中佐の父親(伊藤雄之助)と日本の母といった風情でありながらしたたかな母親(山岡久乃)には、作家(山茶花究)の二号の娘(浜田ゆう子)、芸能プロダクションに勤める息子(川端愛光)がいる。この家族のなんとも優雅な生活は、二号の娘が世話になる作家からの借金と息子が使い込んだ会社の金で成りたっている。で、息子の愛人である会社の経理事務の女が若尾文子。彼女がドラマのキーパースンでもあり、最後の悲劇的な(?)結末へとこの家族を引きづりこんでいく。
すべてのドラマはこの団地の一室で繰り広げられ、カメラはここから一歩も出ることがない。カメラワーク、カット割、人物配置などの絶妙なミザンス、そして丁々発止のセリフの応酬。さらに、家族以外の登場人物も、実に胡散臭く、特に小沢昭一のインチキ臭さには報復絶倒なのだった。それは、川島雄三の小気味いい演出とともに、新藤兼人の脚本に預かるところも大きいのだろう。さらに、金のためなら娘も売る伊藤雄之助の怪演、蓮っ葉でしたたかな女を演じさせたら天下一品の若尾文子、最後のショットで見せる冷たく暗い山岡久乃の眼差し・・・なかでも、娘役の浜田ゆう子のアプレゲールぶりはなかなかにエロいです。この女優さんが、葉山良二の奥さんとは知らんかった。もうひとり、強烈な個性はないのだが、奇妙な味を出しているのが息子役の川畑愛光。この映画を観るまでまったく知らなかった俳優なのだが、1965年以降は映画界から消えたようで、そのプロフィールがいまひとつさだかでない。ちょいと気になるのだけれど・・・。ちなみに、この姉弟が、ベランダ越しの真っ赤に染まった夕焼けの空をバックに、ビートの利いた雅楽に合わせて踊り狂うシーンは、なかなかにシュールであります。
ともあれ、この作品を撮った翌年に45歳で夭折した川島雄三が天才と称される理由が、この作品で合点がいったゴールデンウィークの午後であった。
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